第一次選考あと一歩作品詳細

『白い絆』 西丸 あい子


選評

知子が心から愛した男、裕一郎は既婚者だった。お互い惹かれ合い、愛し合うも妻子を傷つけたくない裕一郎は、離婚は絶対しないという条件のもと、知子と付き合いはじめる。その後、知子は結婚し子供をもうけるが2人の関係は続いていく。お互い子供も自立し50代にさしかかった頃、裕一郎の妻が事故死。そして知子の夫も病死し2人の間に何の障害もなくなったとき、裕一郎が病魔におかされていることが発覚する──。長年にわたる不倫、そして病気による死別。ストーリーはありがちだが、知子と裕一郎の出会いや恋に落ちていく心情。知子が思う不倫への罪悪感、恋の喜びなどがとても丁寧に描かれており好感が持てた。しかし、2人のデートシーンが毎回あまり変わりなく、単調で飽きてしまう。確かに「愛しているから会うだけで幸せ」という雰囲気は伝わるが、小説なのでもう少し波が欲しかった。

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