第一次選考あと一歩作品詳細

『銀髪のアン』 波多江 伸子


選評

手慣れた柔らかい筆致で綴られた、55歳の女性のこれまでの人生を静かに受けいれたささやかな日常や大切なものへの想いなどが心地よい。実の病妻に対しては煮え切らない態度をとる主人公の恋人が、一歩間違えば非常に自己中心的かつ無責任な男に見えてしまうのが瑕瑾。ラストシーンの一文も、「邪魔者はいなくなった」と読めてしまい、人生経験を丹念に積み上げてきた主人公の前向きで自立した姿勢の爽やかさとそぐわない後味が感じられたのが惜しかった。

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