第一次選考あと一歩作品詳細

『狼のメーキャップ』 鍛塚 保春


選評

暗殺組織に属する女性アサシン、不知火葉子は隠れ蓑としてカルチャースクールで働くスゴ腕。本当の身分を明かせない葉子には真実の愛を育むことは叶わず、淋しさ故に組織の同僚やカルチャースクールの上司と身体を重ねる。そんなある日、組織が請負うターゲットとして、かつての恋人、清司の名前を発見する。清司を殺すにせよ救うにせよ葉子はこの仕事に関わらずにはいられない。しかし組織は葉子の行動を阻み、さらに彼女を疎ましく思う後輩ノボルや組織のボスの息子の思惑などが事件にからみ、殺しの大団円へと向かって行く──。60年代の日活ハードボイルドを彷彿とさせる文体は、ある意味ベタなダイアローグを駆使しており、新しい試みが感じられる。しかしながら、文体に懲りすぎるあまり。読書リズムを掴むことが難しい。さらにストーリーは起伏に飛んでいるものの、伏線を張りすぎるあまり、次の展開が透けて見えてしまうのが難。次々とドンデン返しを用意するも乗れず、結末のカタルシスも弱かった。

一覧に戻る