第一次選考あと一歩作品詳細

『永遠にプロローグ』 黒生 ゆり


選評

中学、高校とひどいイジメにあい、人と接することにトラウマを感じていたエリは、大学にもいかず、仕事もせずにニートになってしまった。さらに、唯一、心の支えだった家庭教師の国近は交通事故で死んでしまう。エリは国近の家に忍び込んで、国近の日記を読む。すると、驚くべきことに、国近はエリをイジメていた張本人の宮杉と付き合っていた──。エリのひたすら惨めな日常が語られる導入部。エリの出口のない日常に息がつまる。しかも、唯一の心の支えだった国近が、エリをイジメていた張本人の宮杉と付き合っていたという事実が明かされるに至っては、この事態をどう収拾するのか逆に興味を持った。結果的に、腑に落ちる結末ではなかったが、エリの思惑と、エリをとりまくさまざまな登場人物を交錯させた構成はおもしろかった。しかし、物語を語る視点が「エリ」、「国近」と何度も行き来する構成はいただけない。できれば、すべてエリの一人称にして、国近の視点は日記のみにするか、あるいは冒頭から視点をエリのみに近づきすぎずに「神の視点」ですべての登場人物をまんべんなく描いてほしかった。また、400字の原稿がA4用紙一枚にプリントされていて、とても読みづらく、何度ももとに戻って読み直さねばならなかったことも、もしかしたらマイナス点になってしまったかもしれない。

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