第一次選考あと一歩作品詳細

『アー・ユー・ゴーイング・オン・マイ・ウェイ』 浅川 辰


選評

東京の町工場の倅として生まれた松波洋平は、サンフランシスコで企業研修のコーディネイターをしているが、センスイフードのオーナー社長に誘われ、メルボルンカフェ社とのフランチャイズ事業での仕事を請け負う。さまざまな困難を乗り越え、洋平は見事、その仕事を成功させる──。アメリカで9歳の少女ばかりか、モデルの美女までをも虜にしてしまう日本人青年、洋平というキャラクターは、「東洋人は白人女性にモテない」という固定観念をもっている男性に夢を与える存在だろう。また、アメリカおよび日本の飲食ビジネスという背景についても描写は克明で、ビジネス小説として読み応えは十分だ。だが、洋平は『島耕作』や『ジェームズ・ボンド』のように自らの特殊能力を武器にしようとはせず、あくまで正攻法で困難を乗り越えようとしているあたり、その生真面目で優等生的な性格を嫌味と感じる読者も多いかもしれない。

一覧に戻る