第二次選考通過作品詳細

『NEGURA』 篠原 啓介

主人公・樹乃村の親友、三島刑事が自殺した。三島刑事が追っていた事件は樹乃村の会社の同僚の殺人事件だった。自殺に疑問を抱いた樹乃村は、重要参考人である梶田を追う。梶田もまた、樹乃村の同僚であり、殺害された被害者とは三角関係の仲だった。樹乃村は思いを寄せていた新人の女性の協力を得、梶田を追うが、梶田の犯行はなかなか立証できない。梶田に「念じるだけで人を殺せる能力」でもなければ……。NEGURAという特殊な力を持った生物が引き起こす殺人ミステリー。


選評

『NEGURA』は、サラリーマンの主人公が同僚の殺人事件と親友の刑事の自殺の謎を探るうち、「念じるだけで人を殺せる能力」を持つNEGURAの存在にブチ当たるというSF作品です。
 特殊な力を持った謎の生物のディテールの面白さに興味が集まる一方、「科学的な設定に古くささを感じる。ゲノムや脳科学など、現代性のある題材ならば興味深く読めたかもしれない」(高嶋)という反論には説得力がありました。また、「恋愛があくまで添え物として扱われている感は否めない」(梅村)、「ヒロインのキャラクターが立っていないのが残念。恋愛表現のリアル感が弱いのが惜しかった」(潮凪)というラブストーリーとしての弱さにも疑問が呈されました。
 NEGURAの特殊能力によって、人間の憎しみが増幅されるという設定は面白いだけに、人間心理の奥深さまで踏み込むことができれば、SF小説としても、恋愛小説としても、もっと完成度の高い作品になったのではないでしょうか。
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