第二次選考通過作品詳細

『レインボーエッグ・レインボーフラッグ』 水倉 悠

あるとき、東京は青山にある新興のデザイン会社「クローバー」に、社長である周藤守の恋人・海王純が社長代行として訪れた。周藤は、自分と純の兄のような存在である橘啓二郎の看病のため京都へ出掛ける ことになったのだが、その間会社の面倒を見るように純に託したのだ。「クローバー」は、会社としてはまだ未熟であったが、純が社長代理として加わることで、急速に一人前の企業としての体を成していくことになる。そして、春江・夏美・秋子・真冬といったクローバーのスタッフたちも、次第に純に対して心を開いていくことになり、また純の人柄に惹かれていくこととなる。しかし純には人には言えない体の秘密があった。また、純には美樹という姉がいるのだが、その美樹の恋人こそは、京都で病を患っている橘啓二郎だったのだ。橘は美樹と関係を結んでしまったがために、海王家にまつわる「呪い」によって病に冒されることになったのであった。周藤が京都へ赴いたのは、その海王家の血の秘密を解くためでもあった。一方、「クローバー」では純をめぐって女同士の激しい感情の応酬が続いていた。仕事上で目覚ましい活躍を見せる純に、スタッフはそれぞれに惹かれるようになっていたのだ。そんなある日、クローバーのスタッフの一人・真冬は海王家の秘密を知ることになる。そして、その秘密を知った「クローバー」スタッフたちは、純に対する感情の高ぶりを抑えることができず、身の毛もよだつような計画を実行することになる……。


選評

『レインボーエッグ・レインボーフラッグ』は、アニメの世界から飛び出してきたようなギャル系起業家たちを中心としたビジネス小説的要素と、成人すると男から女になってしまうという数奇な一族を描いた伝奇小説的な要素が織り交ぜられた不思議な小説です。「ビジネス小説として読んでよいのか、伝奇小説として読めばいいのか、混乱してしまった。どちらかの要素に絞り込んだほうがよかったのでは」(石田)という意見が多かった一方、「むしろ、どちらの要素ももっと濃く描いてほしかった」(広坂)という意見とに評価は分かれました。
 「デザイン会社クローバーで起こる一連のエピソードは、実際のビジネスの現場ではあり得ないことの連続で、リアリティがない」(高嶋)、「伝奇的な部分を日本神話で説明しているところには、あまり説得力を感じられなかった」(稗田)と、ビジネス小説の部分にも、伝奇小説の部分にもリアリティの弱さを指摘された点も残念でした。
一覧に戻る