第二次選考通過作品詳細
『ミルフィーユ』 ゆーや
中学生の雄太には2人の彼女がいる。一人は同級生。もう一人は学校の先生だ。中学に入学して以来、同級生からイジメを受けてきた雄太。そして生徒にまともに注意もできない新米美術教師の綾乃。2人はいつしか意気投合し恋人同士になる。だが、雄太には小学生から付き合ってきた彼女がいるため、二股をかけることに。美術室で秘密のデートを重ねる雄太と綾乃。お互いの存在はどんどん大きなものになっていく。だからといって同級生の彼女とは別れられるわけでもない。不思議な三角関係のまま、雄太の中学生活は終わりを告げる。そして高校生になった雄太は……。
選評
『ミルフィーユ』は、いじめに苦しむ中学生男子が、女性教師との恋によって救われていく物語。
「教師だけでなく、小学生時代から付き合っている彼女もいるという三角関係の設定が面白い。彼女に助けられ、女子更衣室で服を着替えさせてもらう主人公のダメっぷりには魅力を感じた。だめんずの心を揺さぶるキャラクターだと思う」(高嶋)と、この作品中、饒舌に物語を語る主人公のキャラクターは絶賛されたものの、「中学生と先生の三角関係というのは面白い設定だが、その三角関係から生じる誤解やトラブルなどがまったくないのはおかしい。ふたりの彼女の間で困る主人公の姿を見たかった」(稗田)という意見もありました。また、いじめを受けながらも女性にモテる中学生男子という設定には「そういう男子は、この主人公のように無抵抗ではなく、ケンカ上等で立ち向かっていく性格なのではないか」(潮凪)と、リアリティの面で疑義を感じる委員もいました。
その他、「21歳という著者の世代にしか書けない独特のセンスを感じたが、主人公である中学生の語り口と、著者自身の語り口が混在し、練れていないという感は否めなかった」(梅村)、「中学生男子の恋人になる23歳の女性教師があまりに子供っぽいので、ラブストーリーとしてリアリティを感じられなかった」(石田)といった意見もありました。
→ 一覧に戻る