第二次選考通過作品詳細

『プレリュード』 水木 彩

「女の園」である楽器店の音楽講師たちの嫉妬と友情に満ちた群像劇を描くとともにセックスレスに悩む主人公の主婦が、離婚、新しい恋人との出会いを経験するまでの物語。


選評

『プレリュード』は、音楽教室を舞台に女性講師たちの大奥的な葛藤を描く中、ヒロインの女性がセックスレスな夫婦関係を清算して、新たな恋人との恋を成就させるまでの物語です。
 「セックスレスでありながら7年間を無駄に過ごしてしまった主人公、夫に浮気をされた仕返しに自分も浮気をするも、夫への未練を断ち切れない女性など、この物語にはいろいろな悩みを背負った女性が出てくる。その一人一人が人間くさくて愛らしい。鋭い人間観察がこの書き手の強み」(高嶋)と、だめんず女性の共感を強く呼んだようです。
 ただ、その一方で男性のキャラクターの描写の甘さは多くの委員が指摘するところで、「それまで冷淡で、妻に何の関心も寄せなかった夫が、別れ話を切り出された途端に『実は愛していた』と告白するのは納得しがたい」(坂梨)、「離婚から再婚に至る過程の男性たちの反応があっさりし過ぎてヤマ場の盛り上がりに欠け、あっけなく終わってしまった」(石田)、「絵にかいたような若い理想的な男と結ばれるという安易なハッピーエンドには鼻白んだ」(広坂)という批判も多くありました。
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