第二次選考通過作品詳細

『走れ正義』 亜能 退人

正義は高校一年生。ある日、恋人の真紀がヤクザに売り渡され、借金の形として外国へ売られてしまうという。「そのかわり、12時までに1000万円を用意したら返してやる」正義は走る。果たして彼は、制限時間のうちに真紀を救うことができるだろうか?


選評

『走れ正義』は、借金のかたにヤクザに身を売り渡した恋人の真紀を、「12時間で1000万円を用意したら返してやる」という条件のもと、お金集めに奔走する少年、 正義の奮闘を描いたタイムリミットサスペンス。
 「お金を稼ぐセコい手段のコミカル性で楽しめた」(梅村)、「彼女の父親が実はヤクザだったり、1000万円のブツが小麦粉だったり、“だまし”がうまくて何度もひっかかった」(高嶋)などの好評価もありましたが、「中盤以降、構成もディテールの積み上げも甘くなってしまったのが残念。パワーはあるが、習作の域を出ていないように思う」(梅村)、「ストーリーが単純過ぎて、冒険の中身が物足りなかった。もっとヤマ場がほしい」(坂梨)といった意見も多かったです。最初のテンションが中盤で下がってしまうというのは、新人作家の作品に特有の傾向のようにも思います。いかにダレ場を作らず、最初にやりたかったことを持続させるかというのは大きな課題でしょう。
 最後に、委員からのアドバイス。「ただ、この方はコメディを書く才能はあると思うんです。だから、主人公をいろいろな場所に移動させないで、逆に舞台を限定して、三谷幸喜が書くようなファルス(笑劇)を描けばよかったのではないでしょうか」(高嶋)
一覧に戻る