第一次選考通過作品詳細

『雨に煙るワルツ』 沖本 ゆきこ

ロックバンド「ステラ」を売り出そうと結成された、プロモーターチーム「パピオン」の3人の女性が、バンドのメンバーを巻き込んだ恋と肉欲の花を咲かせ、バンドを華々しくデビューさせるとともにそれぞれの人生を爆発させて会社を退社。 散っていく物語。


選評

まず、これを小説と呼ぶには抵抗がある。 それほど稚拙な文章だ。 しかし、映画のプロット(あるいは漫画の原作)としては素晴らしい。 何よりバンドそっちのけで音楽業界で華々しい活躍をする「パピオン」という バイタリティあふれる女たちの存在感が圧倒的だ。 ヒロインの理紗は八方美人で天然ボケの美女。 コネ入社の麻里は男好きのするフェロモン女。 そして、強烈な個性を発揮するさおりは、功名心、自己愛の権化で、気分次第で他者を押しのけてでも己の願望を満たそうとするエゴイスト。 この3人の女が、バンド「ステラ」のメンバーを巻き込み、強烈な火花を散らし、散っていくその物語には引き込まれた。 音楽レーベルの内幕ものとしても興味深く(実状とのギャップはどうあれ)、題材もおもしろい。 「人は一生のうち、一作は傑作が書ける」というが、これはその手の作品なのか、それとも「磨けば光る原石」なのか、判断に迷う。 第二次選考委員のみなさんの意見を聞いてみたい。

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