第一次選考あと一歩作品詳細

『もう一度 巡り会うために』 河野 陽子


選評

優一が祖父に託された手紙は、60年前、戦死した祖父の兄が、愛する人へと自らの思いを伝えようとした手紙だった。優一は、その手紙を老婆のもとへと届ける。そして、その孫と結ばれる──。相手の気持ちを知らずに通り過ぎた後悔より、自分の気持ちを伝えずにいた後悔のほうが大きい。そんなテーマがしんみり伝わってくるハートウォーミングな作品。心温められました。ただ、優一と陽子が偶然出会うところは、やはりストーリー作りにおいて近道をとり過ぎているような気がしますし、「軟派」によって出会った優一と陽子の仲が急に接近する様子は、もっとじっくり段階を経て描かれなければリアリティがありません。戦死した祖父の兄が死ぬ場面についての説明も、まずは祖父の口から、続いて祖父の兄の手紙から、さらには優一の口から、そして最後に祖父の兄の手紙からと、何度も同じことが語られますが、こうした説明の無駄な部分も見受けられます。以上の点を整理したうえで書き直せば、さらにいい作品になると思います。

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