第一次選考あと一歩作品詳細

『フラワーガーデン』 小山 千鶴


選評

主人公・ハルナは二人の男性からほぼ同時期に告白される。一人は電車で出会ったトオル、もう一人は年上の幼馴染みのカズト(かずにぃ)。どちらの男性を本当に愛しているのかわからず、困惑するハルナは二人の間を行きつ戻りつする。この三角関係はハルナとカズトの結婚式、そして出産の後まで続く。小説の終わりにハルナは生まれた子供にメッセージを残す。「ちびちゃんへ  あなたには二人の素敵なパパがいます」。ハルミと、娘と、そして二人のパパ(カズト・トオル)。三角関係、出産をへて、思いもかけない不思議な「家族」ができあがり、物語は幕を閉じたのだった。漫画『NANA』を連想させるようなコミカルなタッチで話は進展してゆくが地の文・会話文が陳腐であるため、冗長に感じる。〈驚きのあまり手に持っていた袋を落とす〉など、紋切り型の感情表現も多い。天才児としてアメリカで育ったトオルの知られざる経歴を挿話とするなど、ストーリーに工夫はみられるが、冗漫な印象は否めない。

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