第一次選考あと一歩作品詳細

『ピンクドラゴ』 里美 杏


選評

阿蘇山麓の弓の矢村には、市野零という呪術使いがいる。零は一定期間、若い男を供物として捧げないと、村の家畜や妊婦たちに不産現象をひきおこす。この物語は、市野零を中心に、さまざまな人物との交流を描くことで、生命の謎を解き明かす意欲作である。しかし、難解である。登場人物に感情移入し、その世界観にひたるといった一般の小説の読み方を拒否している。まるでニーチェの哲学書を読んでいるような気分だ。従って、「弓の矢村」と「弓の也村」の表記が2種類あることについてもそれが誤字なのか、意図のあることなのか判断できない。

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