第一次選考あと一歩作品詳細

『ソング・フォー・ユー』 東 藤近


選評

敏腕音楽プロデューサーの斉木悠は、3年前に恋人のアミを事故で失い、また自ら育てたアーティストのジュンジが彼の元を離れて失踪。大きなショックを受けていた。そんな彼が、音楽を通じたボランティアグループの代表、沢村凉子、アスペルガー症候群で大きな才能をもったレイカなどとの出会いを経て立ち直っていく。音楽業界の内幕ものとして、ビジネス面から音作りに至るまでが見事に活写されている。音楽好きにはたまらない作品だ。が、その一方で人間に関する描写は一面的で、キャラクターが立っていないのが残念。音楽の専門用語を多用するところも、読者へのサービス精神に欠けているように思う。例えばラスト、ヒロインが主人公の書いた曲を評する重要なセリフ。「とても美しい曲よ。このアウフタクトで入るタイミングも、リフレインの展開も」音楽に詳しい人であれば、その曲がどのような形式で書かれた曲なのかは理解できるが、多くの人にはその曲も持つムードは伝わらないのではないか。

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