第一次選考あと一歩作品詳細

『獲猫』 宮原 豊


選評

ウィーンの教会で指揮者をしている主人公、幽介は、恋人の裕美に誘われ、真夏の京都に向かう。そこで主人公は、裕美の出生にまつわる心中物語の夢幻の世界を体験する──。格調の高い旧字体で、フルトヴェングラー、近松門左衛門、孔子、荘子などなど、古今東西の英知をこれでもかとばかりに引用した絢爛豪華な絵巻物。目眩がするような豪華な作品だ。だが、あまりに高踏的な内容のため、この作品をすみずみまで理解するには、相当な知識と教養を要するだろう。実は、評者もこの作品を本当に理解できたのか自信がない。時空を超越した踊りと祭りの場面など、おそらくオリジナルなモチーフで書かれた部分は映像的にも面白いので、その点が非常に残念だ。

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