第一次選考あと一歩作品詳細

『シャウト・イン・横浜』 fre9


選評

広告代理店の営業職につく横浜生まれのマリコは、インターネットカフェで彫りの深い、無垢なタイ青年と出会い、恋をする。だが、タイ青年は強盗事件であらぬ嫌疑をかけられ、強制退去。ふたりの仲は引き裂かれる──。横浜の外国人就労者らの「異人館」という舞台設定に魅力を感じた。マリコの捨て鉢な一人語りの文体や、外国人の職業斡旋係を務める中年男のイヌヅカ博士など、キャラクターもおもしろい。が、物語の中盤まで、登場人物の紹介に終始する展開は、いささか退屈。イヌヅカ博士に呼ばれたマリコが、長い道を歩く間のモノローグという体裁をとっているので、マリコとタイ青年との恋も断片的にしか描かれず、「外国人との恋」というテーマの深いところまで描き切れてなかったのが惜しい。

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