第一次選考あと一歩作品詳細

『炬燵』 間 正


選評

生命力にあふれた、楽しく読める性愛小説。今回色々な意味で最も驚愕させられた作品だった。天衣無縫のヒロインに、主人公が狼狽え周章てふためいて「君は…」と入れる突っ込みに、何度も爆笑させられた。主人公とヒロインが隣の便所で音も聞える排便中に語り合っているのに、恋愛が全く形なしにならない楽しい小説を読むことが出来るのだから。作者の年齢を知って驚いたが納得した。ときどき語り手の人称の混乱が起き、回想小説なのか違うのかが上手く伝わってこなかったことと、結末近くでヒロインが主人公を前にして実の父親との濃密な触れ合いを延々と語るとき、主人公が萎えもしないし嫉妬もしていないことが少々疑問。

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