第一次選考あと一歩作品詳細

『幻日』 稲毛 歩美


選評

母を失った少女・雪尾は、少年・雨青の家にひきとられる。雨青は、雪尾に恋をする。雨青の親友、兼造も雪尾に恋こがれるが、雪尾は雨青を選ぶ。だが、やがて雪尾は実家に引き取られ、ふたりは離ればなれに。24歳になって再会した雪尾は、兼造にプロポーズされて結婚する。主婦になった雪尾だが、雨青のことが忘れられず、やがて雨青の子を産む。兼造の嫉妬にさらされ、雪尾は精神を病んで死の床につく──。14歳の少女が書いたとは思えない、波乱に富んだストーリー。だが、いささかドラマチックに過ぎるために、登場人物たちの気持ちがストーリーについてこれず、ちぐはぐな場面も見受けられたのは残念(特に登場人物たちが24歳になってから)。また、雪尾が兼造を選んで結婚したいきさつについては、雪尾自身が何度も後悔する場面があるが、そもそもなぜそのような選択をしたのか、もっとよく書き込む必要があったのではないか。「セックス」「結婚生活」についても、もう少し実体験に即した描写が望ましい。同じ作者の手で、等身大の14歳の主人公を描いた作品を読みたかったと願うのは贅沢だろうか。

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