第一次選考あと一歩作品詳細

『銀の葉、舞い舞い』 夕野 純乃


選評

70歳の老人、平次は肝臓癌で病の床に倒れる。すると、3年前に死んだ妻、茂子が現れる。あの世では、娑婆で暮らしたことをすべて思い出せないと成仏できない、そう言うのだ。平次は妻の記憶を取り戻すために、外泊許可をとりつけて町を歩く。やがて茂子はすべてを思い出し、成仏していく──。年老いた平次と茂子との、つつましくも幸せな愛情が伝わってくる、しんみりした味わいの小説だ。キャラクターもひとりひとり生きていて、場面の描写力も手堅い。かなりの実力のある書き手だと思った。が、残念なことにストーリーに起伏がなく、「幽霊になった妻と再会」するというシチュエーションが、充分に使いこなされていないような印象を受ける。幽霊だからこそ知り得たこと、幽霊になったからこそ気づいたこと、幽霊になってしまった悲しみ、葛藤などを描き尽くすような場面があれば、もっといい作品になったと思う。

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