第一次選考あと一歩作品詳細

『オーロラのふたり』 関口 暁人


選評

熱狂的な恋愛を経て結ばれた光里と星太だったが、その30年後、50歳をむかえるころには醜い中年になり、燃え上がった愛も冷え切っていた。だが、オーロラの魔法により、ふたりは高校生に若返りする。お互いへの愛を失ったふたりは、それぞれ新しい別々の人生を歩もうとする──。冒頭、望まぬ結婚をさせられる光里を星太が救い出すシーンは映画『卒業』そのもので、ニヤリとさせられた。その後は、30年後の初老の時代、続いて若返って高校生になるふたり。まるでジェットコースターに乗っているかのような展開に。起伏のあるストーリーにドキドキハラハラする場面もあるが、その反面、各場面の展開が性急すぎ、その勢いに振り回されてついていけなくなる読者も多いのではないか。ヒーローとヒロインが、「20歳」「50歳」「50歳の高校生」という具合に目まぐるしく姿形を変えるため、彼らがどんな顔をして、どんな性格で、どんなキャラクターなのかが掴みにくく、感情移入できないのも難点だ。(おそらく映像化した際にも同じような障害にぶつかるだろう)「お互いが年をとっても相手を愛せるか?」というテーマで「愛の倦怠との闘い」を描くならば、『卒業』の続編としてストーリーを単純化して描いたほうがよかったのではないか。少なくとも主要登場人物の「変身」は一回限りにしたほうがいいと思う。

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