第一次選考あと一歩作品詳細

『生きる価値、0』 若村 咲希


選評

もと優等生のニートの修也22歳は四年間引きこもり生活をつづけていた。母親に失望され、彼は自分の存在を認めることすらできない。そこに現れるアヤ14歳。彼女は義理の母親から虐待を受けていた。アヤの誘いで、家を飛び出し日本中を旅する二人。旅をし、アヤと過ごすうちに修也の心は徐々に変化してゆく。しかし、アヤは不治の病に冒されていた。アヤは死に、修也はその遺骸を富士山に葬る──。修也がニートになった原因は説明されているが、ではニート的な心の屈託や、人間関係の摩擦がなんらかの形で表現されているかというとそういった記述はほとんどない。四年間も引きこもっていたはずの修也の振る舞い・思考は、平凡な普通の若者のそれと変わるところがない。ニートという設定が恣意的なもののように思われた。修也の「働く」ことに対する認識の変化もそのプロセスがほぼ書かれていないので説得力に欠ける。ラストシーンは竹取物語のクライマックスを意識したものであろうか。

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