第一次選考通過作品詳細

『ミルフィーユ』 ゆーや

中学生の雄太には2人の彼女がいる。一人は同級生。もう一人は学校の先生だ。中学に入学して以来、同級生からイジメを受けてきた雄太。そして生徒にまともに注意もできない新米美術教師の綾乃。2人はいつしか意気投合し恋人同士になる。だが、雄太には小学生の時から付き合ってきた彼女がいるため、二股をかけることに。美術室で秘密のデートを重ねる雄太と綾乃。お互いの存在はどんどん大きなものになっていく。だからといって同級生の彼女とは別れられるわけでもない。不思議な三角関係のまま、雄太の中学生活は終わりを告げる。そして高校生になった雄太は……。


選評

主人公、女教師、同級生の彼女、それぞれキャラクターが立っていて魅力的。そのせいか、いつの間にか小説の中に引きこまれ、うっかりこの不思議な三角関係を受け入れてしまった。主人公に魅力がないために、「なぜ、この男がもてるのだろう」と疑問を抱く作品は多い。しかしこの作品は、主人公が「二股」をかけることに違和感を感じなかった。主人公はいじめられているし、ものすごく勉強ができるとか、スポーツ万能というわけでもない。でも、ちょっとしたエピソードやセリフから、「そうそう、こういう人モテるんだよね」と納得させられてしまった。書き手の文章力とセンスのなせる業だろう。中学生と教師の恋愛なんて、実際にはあり得ないことかもしれないけれど、この作品には妙なリアリティがあって、読んでいるとなんだかせつない思いになる。次の恋では、好きな人に素直に思いをぶつけてみようかな、そんな勇気をくれる作品だ。

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