第三次選考通過作品詳細

『style』 広木 赤

俺・江角一弥は高専に通う学生。リストカット癖のある私・矢尾猫子のもうひとつの性癖である万引きの現場に居合わせ、結果的に彼女を助ける。一弥はバイト先の店長入谷沙織に好きだと告白される。一弥に助けられたことで猫子は淡い恋心を抱く。彼女がバイトをするファミレスでの友人タマ子は、少々妙なところのある少女だが、一弥の居合わせた駅で電車に飛び込み自殺する。タマ子の指を拾い持ち帰る一弥。彼は沙織と付き合うことにする。猫子は一弥と沙織の店にやって来て、リストカットの傷を見せ、初めてことばを交わし、互いの名を知り、一弥にキスをする。一弥は沙織と結婚することにする。リストカットをはかり、入院した猫子に呼び出された一弥が差しだしたタマ子の指を、猫子は彼に「また会えるために」と託す。そして二人は別れる。


書店店員

今の時代に19歳という年を生きる少年少女の「リアル」が伝わりました。青春小説としてもよく読めます。

(丸善/上村祐子さん)

独特のメール文のようななまなましい文体と、リストカットなどのグロテスクな描写に抵抗を感じる人も多いと思いますが、ものすごいインパクトをもった作品であることは間違いなしです。

(紀伊國屋書店/白井恵美子さん)

物語の中から説明を廃し、ひたすら場面を描写することに徹した筆力と体力、観察眼に脱帽。とても面白く読みました。

(オリオン書房/白川浩介さん)