第一次選考通過作品詳細

『刹那』 ユカ

家族に恵まれず、学校にも馴染めず、孤独で無為な日々を送る高校生・響は、出会い系サイト年上の女性・香代と知り合い一目ぼれをする。だが、香代の心は、いまだ元カレである大西に囚われていた。そして、彼女が大西に囚われていたのは、「心」だけではなかった。響は、香代の家で、大量の錠剤をみつける。それは、覚せい剤だった……。クスリの影響と響への思いとが入り交じり、次第に壊れていく香代。二人の悲劇的な恋は、やがて周囲をも巻き込んでいく……。


選評

15歳の著者が描いたこの作品については、率直にいって、とても困惑しました。そして、その「困惑」ゆえに、もっとも印象に残る作品でした。出会い系サイト、ドラッグなど、若者を取り巻く暗黒部分が単なる物語の「背景」として設定されていることと、ある人を愛することがそれ以外の人を傷つけることに安易に結びつくこと、自分も含めて人間の命を易々と(と私には思える)放棄してしまうこと……その「根拠」や「理由」がほとんど描かれていないのは、この著者の筆力不足なのか、それとも……「理由」、「根拠」を求めること自体が、著者の同時代人である登場人物たちにとっては無意味なのかもしれない。そうだとすれば、15歳の著者にしか書き得なかった作品であると言えるでしょう。

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