受賞作品詳細
第5回 日本ラブストーリー大賞 エンタテインメント特別賞
『55(ごじゅうご)』/著者:矢城 潤一
※書籍化に伴い、タイトル『ふたたび swing me again』と改題いたしました。
高校三年生の宏人は半年前から不登校になり、半引きこもり状態にあった。ある早朝、部屋の窓から目撃したゴミを捨てる女性の姿に惹きつけられてしまう宏人。女性を「ゴミ子」と命名し、その観察日記を自分のブログに載せるようになる。そんな宏人の家に55年ぶりに、ハンセン病の療養所から祖父の健三郎が帰ってくることになる。突然の同居に反発する宏人だったが、健三郎のペースに徐々に巻き込まれ、父親を産んですぐに死んだ祖母の百合子の墓を一緒に探す羽目になる。お墓を探しながら健三郎が生きてきた青春時代や過酷な過去を知ることにことになる宏人。偶然に図書館勤めのゴミ子が健三郎を手助けしていたことがわかり、共に行動することになる。調べていくうちに死んだと思っていた百合子が生きていて、沖縄にいることが分かってくる。宏人は健三郎と共に沖縄に飛ぶ。55年ぶりに実現した愛し合う二人の再会。しかし、百合子はすでに死の床にあった……。
著者:矢城 潤一(やぎ じゅんいち)プロフィール
大学を卒業後、フリーの助監督になる。北野武、原田眞人、長崎俊一など個性的な監督の現場で経験を積んだ後、自己資金で『ある探偵の憂鬱』を監督。以降、様々な映像作品に関わりながら、テレビドラマや映画の脚本も手がけるようになる。監督作品として『ある探偵の憂鬱』(2000年公開)、『ねこのひげ』(2008年公開)、脚本作品として『6週間』(塩屋俊監督)、『ウィニングパス』(田中新一監督)がある。
受賞者コメント
梅雨時のジメついた部屋で必死に小説に挑み格闘したことが、こんな形で報われ、驚きと共に猛烈に嬉しさを感じています。小説の何たるかもまったく分からず、ただ格闘したことのみに満足していた私には、正直、身に余る思いです。今、小説は無限に広がる宇宙のように私の目に映っています。その中を漂流し続けるのか、どこかに漂着するのか、ブラックホールに飲み込まれるのか…。とにかく藻掻けるだけ藻掻き続けていく覚悟です。そんな幸運な機会を与えて下さった関係者の皆さまに、心から感謝いたします。