2次選考 あと一歩の作品選評
『絵事師』/長野薫裕
かつて美大生だった秋草一紀は、勤務していた広告会社を辞めて独立後、仕事がなく、バーで飲んだくれていた。そんなある日、以前に知り合ったホステスのマユから「私を描いて」という依頼を受ける。いつしか一紀は女たちを描く「絵事師」として生活していくことになり……。
絵、酒、旅など、知識と教養と経験に裏打ちされていることを感じさせる上質の作品で、大人の読者にも充分通用するとの高い評価が集まった反面、正統派すぎて新鮮味がない点や、「会話がとってつけたよう」「いまどきの世代にはリアリティがまったくない」というジェネレーションギャップも指摘され、通過には至りませんでした。