第9回日本ラブストーリー大賞 2次選考あと一歩の作品(13)

秘書室の十戒/B*sami

大手自動車メーカーの秘書室で働く結花は専務の谷原に憧れていたが、彼は出世のため、副社長の娘と結婚し、公私ともに順調な日々を送っていた。そんなある夜、谷原の身にある出来事が起き、自暴自棄で酩酊した彼と一夜を共にする。以来、ふたりは恋人関係になり、結花は彼に溺れていく。そんな彼女の前に谷原の妻と過去に関わりのあった、ゴシップ誌の記者・浅倉が現れて……。交錯するふた組の男女の愛憎を描くドラマ。

構成がしっかりしていて読みやすく、小説を書き慣れているのが伝わってくると、その安定感に高い評価が集まりました。脇役のキャラも立っていて、ライバルが絶妙に絡んで思いがけない過去が明らかにされる過程も見ものと、構成力を称賛する意見もありました。

反面、「一流企業の秘書室」という設定自体が、いまの時代にそぐわないのではという意見や、題材が大映ドラマのように大時代的という意見など、作品自体が「ちょっと古い感じがする」という指摘も多く、残念ながら通過には至りませんでした。

文章力と構成力は申し分ないので、題材をよりリアリティのあるものとすれば、さらなるよい作品が生まれることでしょう。