第9回日本ラブストーリー大賞 2次選考あと一歩の作品(12)

神様の約束/最上雪

高校3年生の正月、初詣で出会った老人に親切にしたら「なんでも望みをひとつ叶えよう」と言われ、大杉純哉は「死ぬまで千回、宝くじに当たるようにしてください」と答える。そして実際に当たるようになった。しかし、誰にもこのことは秘密である。大杉は当せん金で介護施設を作る夢を叶えるため介護福祉士を目指し、学校祭で看護師を目指す香と出会う。当たり続ける宝くじで大金を手に入れた大杉は、香に老人との約束と当せん金のことを話し、夢だった介護教室を始めたいと相談する。さらに数年後、自給自足ができる老人の村を作り、たくさんの人に感謝されるまでになった。子ができ、孫ができ、老いた大杉が購入した宝くじの千回目の当せん番号の発表日、再びあの老人が目の前に現れる。

「死ぬまで千回宝くじに当たった男」という設定が魅力的で、その導入には高い評価が集まりました。主人公とその仲間の男の子たちとのほのぼのとしたやりとりもおもしろく、文章も非常に読みやすくまとまっていました。

反面、「宝くじが当たり続けること」という設定がうまく恋愛に絡んでこなかったのが残念という意見や、お金が山ほど入ってくる状況だからこそ、「お金で買えないものはなんなのか」という命題を主人公に向き合わせるなどをして、小説としての構成や本質的なテーマをしっかり作り込むべきという指摘もあり、残念ながら通過には至りませんでした。

発想はとてもよいと思うので、今後はその発想をもとに「真に描きたかったこと」をきちんと表現できるようになれば、さらによい作品が書けるようになるでしょう。