第9回日本ラブストーリー大賞 2次選考あと一歩の作品(8)
なでしこ荘のまかないごはん/多古田依央
気ままな一人暮らしの大学生、桃園春香はお菓子尽くしのダメダメな食生活が母親にバレてしまい、まかない付きの下宿「なでしこ荘」への引っ越しを命じられ、嫌々下見に行く。ところが、春香と同い年の大学生で、下宿の管理人兼料理担当の秋良(あきら)の料理にひと目惚れならぬひと口惚れ。さっそく引っ越して、その味を覚えようと積極的に料理を手伝うようになる。
「なでしこ荘」の住民はクセのある人ばかりだが、いちばんは近所に住んでいるのにご飯だけ食べに来る態度がデカいイケメン、梅之助。春香は毎日、おいしいご飯を食べながら、料理上手で優しい秋良と、感じは悪いがたまに優しさと真面目さを見せる梅之助の両方に惹かれていく――。
とにかく料理がおいしそうで、おなかがすく、と、料理が描かれている部分に関しては高い評価が集まりました。また、なでしこ荘に集まるキャラクターも個性的で、明るく楽しい小説にまとまっていました。
反面、料理と下宿の空気感は描かれているけれども、ストーリーがない、という厳しい指摘もあり、残念ながら通過には至りませんでした。秋良がなぜあれだけの料理の腕を身につけたのか、その真相こそ読者に明かすべきだったという意見もありました。
料理をテーマにした小説や漫画は一定の人気があるので、料理が得意であるならば、この分野でまたチャレンジしてみるのもよいかもしれません。