第9回日本ラブストーリー大賞 2次選考あと一歩の作品(4)

彼女が愛した黒いたてがみ/北野辺丈樹

 帯広にある畜産大学の4年生、浅野英也は、馬術部の部活動だけの大学生活に幻滅を感じ、大学を辞めようとしていた。そんなおり、アルバイトに行った浦河の牧場でサラブレット・イブリエースと牧場の娘・葉子に出会う。牧場は廃業が決まっており、飼えなくなるイブリエースを乗馬クラブに連れていくことになる英也。イブリエースを通じて、葉子と心と通わせるようになり、英也は大学生活をやりなおす決意をする。だが、葉子は、事故で記憶をなくしてしまう。二人の絆は戻るのか……。北海道を舞台にした爽やかな恋愛物語。

 「牧場やサラブレット、北海道の風景などの描写が巧みで、北の大地の空気感が漂ってきそう」、「競走馬の飼育現場のディテールが丁寧に書かれているため、勉強になる部分が多かった」など、馬と北海道の描写に関しては「非常によく描けている」と高い評価が集まりました。

反面、ヒロインが記憶喪失になるという点に関しては使い古された感があるという意見や、説明的な描写がたんたんと進むので、書かずに済ますところとじっくりと書くところのめりはりが欲しいという指摘などもあり、全体的にもう少し読み応えが欲しかったということで、残念ながら通過には至りませんでした。

しかし、執筆一作目ながらこの完成度はすばらしく、北海道の描写も非常によく描けていたので、ぜひまた北海道をテーマに描いてほしいという意見も多く出ていました。