第9回日本ラブストーリー大賞 2次選考あと一歩の作品(2)
愛しのオンディーヌ/かなつちなつ
ピアニストの道をあきらめて大学のピアノ講師をつとめることになったミチが、口のきけないパン屋の店員ウサミの住むマンションの隣室に引っ越してくる。ウサミの部屋の高級ピアノをミチが借りるようになり、二人は親しくなる。二人はそれぞれに恋人がいたが、心の底ではお互いへの気持ちに気づき始める……。勘違いから始まったミチとウサミの関係をそれぞれの視点からコミカルに描いたラブストーリー。
ピアノと絵画を絡め、アートの要素を巧みに取り入れたテーマや、文章力について高く評価する声があがり、全体的な完成度の高さに称賛の声が集まりました。
反面、「ウサミの耳がじつは聞こえている」という設定に対しては、もっと上手に使う方法があったのではという指摘が多く、「ミチくんの一人称のほうがよかったのでは」という意見もあり、視点についての疑問点やもう少し読み応えが欲しかったといった評価から、残念ながら通過には至りませんでした。
テーマと文章力は水準に達しているので、物語の「仕掛け」の部分の構成を緻密に行えば、さらなる良質のエンターテイメントが描けるようになるかもしれません。