第9回日本ラブストーリー大賞 2次選考通過作品(5)

幸せな未来(あした)/B*sami

 鳴沢麻子は都内の総合病院で働く35歳の勤務医。現在の仕事に満足していたが、恋人の修人が闇金で多額の借金をして返済に困り、院長の娘婿で病院の事務長からの依頼で資産家・黒瀬家のホームドクターとして芦屋に赴く。黒瀬家の若き当主、黒瀬琢磨には20歳の弟の悠磨がいて、弟に自傷癖があるという。麻子の仕事はこの弟の治療と看護だった。地図にも載っていない、携帯の電波も届かない不思議な屋敷のなかで、火傷を負った悠磨が予言めいたことを口走っているのを聞く麻子。好奇心旺盛な麻子は、黒瀬家の不思議な現象に巻き込まれていき……。

 「ミステリアスで、最後まで飽きさせない構成」「キャラクター造形もしっかりしている」と、その筆力の高さにまず称賛の声が集まりました。謎の描き方もうまく、次々と読み進めたくなるリーダビリティには高いものがありました。

「テーマが少し前のサスペンスドラマふうで、若い読者層に受けないのではないか」「悪魔的な儀式の描かれ方が中途半端」など、作品全体の雰囲気や、儀式のディテールに関しては厳しい指摘もありましたが、その圧倒的な筆力は捨てがたいとの意見も多く、通過に至りました。