第9回日本ラブストーリー大賞 2次選考通過作品(2)

純白の飛行機雲/鈴木亜希乃

 高校生の朱里は、幼いころに会ったきり疎遠になっていた叔父・亮司の結婚式に出席するため、両親とともに式場に向かった。亮司の結婚相手は、彼の幼馴染の朋子。彼らは高校時代から十年以上の歳月をかけ、愛を育んできたという。しかし、式の参列者の笑顔はどこか不自然で心から祝っているようには思えない。そんなおり、『式を中止にしなければ、花嫁の命はない』という一通の脅迫状が式場に届く。事件の始まりは、亮司と朋子の高校時代にあった。高校生二人が学校の屋上から飛び降りた心中事件。一人は死に、一人は生き残ったという悲惨な結末だった。生き残ったのは誰なのか。事件は意外な方向へと展開していく――。

 脅迫された結婚式を軸に、出席者らの過去を少しずつ明かして、その結婚式がなぜ異様なものになっているのかを解き明かしていくというその構成に、まずは高い評価が集まりました。また、作品全体に漂う透明感、切なさ、果てしない哀しみなど、すでに確かな空気感を持った小説が描けている点にも称賛の声があがりました。

ただし全体的な枚数が短く、その分、あっけなく終わってしまったという感想を持つ選考委員も少なくありませんでした。朱里のキャラクターの魅力を描き切れていないという指摘もあり、全体的に書き込みが足りない点についてはもっと書いてほしかったとの意見も出ましたが、その空気感と完成度の高さを評価する声も強く、通過に至りました。