第9回日本ラブストーリー大賞1次通過作品(15)

『神様の約束』/最上雪 

 あらすじ 

高校3年生の正月、初詣で出会った老人に親切にしたら「なんでも望みをひとつ叶えよう」と言われ、大杉純哉は「死ぬまで千回、宝くじに当たるようにしてください」と答える。そして実際に当たるようになった。しかし、誰にもこのことは秘密である。大杉は当せん金で介護施設を作る夢を叶えるため介護福祉士を目指し、学校祭で看護師を目指す香と出会う。当たり続ける宝くじで大金を手に入れた大杉は、これから妻となる香に老人との約束とこれからも入るであろう当せん金のことを話し、夢だった介護教室を始めたいと相談する。年配者が年配者を看るという同世代介護だ。さらに数年後、自給自足ができる老人の村を作り、たくさんの人に感謝されるまでになった。子ができ、孫ができ、老いた大杉が購入した宝くじの千回目の当せん番号の発表日、再びあの老人が目の前に現れた。

評価・感想 

宝くじの当せん金の使い方で主人公とその友人達の個性を出し、それぞれの恋愛や結婚も掘り下げてよく書かれていた。また、主人公と恋人、家族、友人の関係がとても親密であたたかく、70年代ロックや落語、浪曲の使いかたもとても自然でよかった。最後まで滑らかに読ませるが、結末の爽快感がとぼしいのでもうひとひねり欲しかった。

一覧に戻る