第9回日本ラブストーリー大賞1次通過作品(13)

『わたしは今、恋をしている』/林 あづさ 

 あらすじ 

輸入雑貨店に勤める夕菜は、店を回ってくる宅配業者、佐伯にひかれていた。佐伯は、周囲の空気が変わるほどの美形だ。飲み会の帰り、夕菜は強引なキャッチセールスにあい、見るからに水商売風のスタイルの佐伯に助けられる。昼間の仕事先の人間に夜の仕事を知られたくなかった佐伯は、夕菜を助けながらも彼女に辛くあたる。ひょんなことから、夕菜は風邪で高熱を出した佐伯の看病をしに、彼の家を訪ねることになる。しかし、その場で佐伯は経験のない夕菜を強引に抱いてしまう。その後も佐伯は自分の夜の商売を口外しないようにと、口封じにビデオを回して夕菜とセックスするなど、セックスだけの関係を続ける。それでも佐伯のことが好きな夕菜。彼女は、そこまでして秘密を守ろうとする佐伯のために、徹底して彼に従い尽くそうと決心する。

評価・感想 

あらすじだけ読むと、なんだか古いタイプの女性のようですが、心理描写が丁寧なせいでしょう。夕菜の思いっきりのよさに、不思議なすがすがしさを感じました。無理やり抱かれることになっても、彼を嫌いになれない。セックスだけの関係はイヤだと思っていても、電話があれば迷わず会いに行ってしまう。そんな複雑な気持ちも十分に書き込まれていて、とても共感できました。佐伯の背景や事情にも納得がいき、佐伯の夕菜に対する感情の変化も読んでいて楽しめます。平凡な女性が抜群の美形男に近づくには、夕菜のような覚悟や一途さが必要だろうなと思わせる説得力もあります。ただ、処女だったからこそ納得のいく面も多いので、次回の作品では、心身ともに大人の女性を描いてみてください。

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