第9回日本ラブストーリー大賞1次通過作品(12)

『ピュグマリオンの恋人』/中島 隆善 

 あらすじ 

鈴木雄介は、30歳過ぎのアイドルオタク。会社をサボっては、人気アイドルユニット「Cuty Coolのメンバー、河本夏海の追っかけに精を出し、現実の恋愛経験はなし。かたやOLの大河内朱音は、いわゆる「歴女」・坂本龍馬を会い知るあまり、現在の軟弱な男には興味なし。そんな二人が、河本夏海が龍馬を主人公にしたドラマに出演したことがきっかけで出会う。互いに相容れない二人だったが、朱音は厳格な父親の薦める見合いを断るために雄介に許婚を演じてもらうことになり、次第に相手を意識し始める。だが、ひょんなことから、アイドルの夏海が雄介の部屋に転がり込んできて……。アイドルオタクと歴女。現実の恋に興味がなかった二人の「リアル恋愛」への道のりを描く。

評価・感想 

「オタク」「腐女子」VS「リア充」という図式は今日的であり、同様のテーマを扱った作品もありそうですが、描写力の点で、同作はレベル以上だと思います。アイドルオタクと歴女のマニアぶりが上手く、というか、執拗に描き出されていて、その執拗ぶりが楽しい。毛色の異なる二人の書き分けもきちんとできています。アイドルが部屋に転がりこんでくる、という設定は、少々ご都合主義か、とも思ったのですが、アイドルのキャラもしっかりと立っていて、マイナスポイントを補って余りある描写力があると感じました。

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