第9回日本ラブストーリー大賞1次通過作品(8)

『純白の飛行機雲』/鈴木 亜希乃 

 あらすじ 

高校生の朱里は、幼いころに会ったきり疎遠になっていた叔父・亮司の結婚式に出席するため、両親とともに式場に向かった。亮司の結婚相手は、彼の幼馴染の朋子。彼らは高校時代から十年以上の歳月をかけ、愛を育んできたという。しかし、式の参列者の笑顔はどこか不自然で心から祝っているようには思えない。そんな折、『式を中止にしなければ、花嫁の命はない』という一通の脅迫状が式場に届く。事件の始まりは、亮司と朋子の高校時代にあった。高校生二人が学校の屋上から飛び降りた心中事件。一人は死に、一人は生き残ったという悲惨な結末だった。生き残ったのは誰なのか。事件は意外な方向へと展開していく。

評価・感想 

構成力、文章力ともに優れた作品だと思います。結婚式に届けられた脅迫状のカギを握る十数年前の心中事件。その真相を少しずつ解き明かしていきつつ、愛とは何かを考えさせるという、読み手を飽きさせないストーリー展開は見事。ほかの作品もぜひ読んでみたいと思わす筆力の持ち主だと思います。難を言えば、主人公・朱里がなぜ事件を起こした叔父に惹かれていくのか、その経緯が描ききれていないことと、朱里とその恋人との関係が今回の事件にどう絡んでいるのかが、希薄なこと。このあたりを書き込むと、もっと深みのある作品になったのではないかと思います。

一覧に戻る