第9回日本ラブストーリー大賞1次通過作品(5)

『彼女の愛した黒いたてがみ』/北野辺 丈樹 

 あらすじ 

帯広にある畜産大学の4年生、浅野英也は、馬術部の部活動だけの大学生活に幻滅を感じ、大学を辞めようとした。そんな折、アルバイトに行った浦河の牧場でサラブレット・イブリエースと牧場の娘・葉子に出会う。牧場は廃業が決まっており、飼えなくなるイブリエースを乗馬クラブに連れていくことになる英也。イブリエースを通じて、葉子と心と通わせるようになり、大学生活をやりなおす決意をする。だが、葉子は、事故で記憶をなくしてしまう。二人の絆は戻るのか……。北海道を舞台にした爽やかな恋愛物語。

評価・感想 

恋愛の経緯やキャラクター設定、「記憶喪失」といったモティーフは、きわめて古典的で新味はないのですが、牧場やサラブレット、北海道の風景などの描写が巧み。北の大地の空気感や草いきれの匂いが漂ってきそうな出来栄えです。その面での描写力という意味では、執筆一作目とは思えない完成度。ラストも新味はありませんが、爽やかな読後感です。

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