第9回日本ラブストーリー大賞1次通過作品(1)

 『ユメクイ』/石原 悠里子

あらすじ

20歳のヒロイン瑠乃には特殊な能力がある。悪夢に苦しんでいる人の涙を食べることで苦しみを取り除くことができるのだ。この行為を、ユメクイという。いま、彼女は戸倉さんという35歳の男性と郊外の一軒家で暮らし、ユメクイをビジネスにして暮らしている。「いつか仕事をやめるときがくるかもしれない」という予感を抱えながら。その予感は、15歳の優という少年の登場で現実的になる。優の夢を食べようとした瑠乃は、料理に混ぜた優の涙を嘔吐してしまったのだ。数日間の努力の末、瑠乃は優と和解し、彼の治療に成功するが、直面しなければならないことに気づく。自分にはなぜ幼いころの記憶がないのか? 自分を保護する戸倉という人物は何者か? 自分はなぜユメクイという能力を手にしたのか? ということを。

評価・感想

非常に計算高く、丁寧にまとまった作品。ユメクイという能力をなぜ、彼女が手にしたのかという種明かしには「惜しい!」と歯がみしてしまったが、作品の完成度は高い。料理を食べるシーン、および料理を作るシーンが多く、ある意味で見せ場になっているが、ドリア、グラタン、ハンバーグ、肉じゃが、ラーメンと、子どもっぽい料理しか出てこなかったこと、そして料理を作るシーンもおいしそうに見えなかったのは残念。

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