あと一歩【5】

ウロボロスな恋/絵理香

ゆりは銀座でナンバーワンのホステスだった。しかし震災後、ばったり客足が途絶え、銀座を去ることになる。就職活動もうまくいかず、生活のために始めたコンビニエンスストアのバイトもなかなかなじめない。そんな折、熱心に仕事を教えてくれるバイト仲間の美大生・佐藤に次第にひかれるようになり、二人はいつしか恋仲に。お金はないが夢に突き進む佐藤が、お金だけにとらわれてきたゆりには眩しく映り、自分のこれまでの価値観を改めて見直すようになる。ある日、佐藤からゆりをモデルに2枚の絵を描きたいと依頼される。テーマは人の二面性。人にはみな二面性がある。相反する価値観が相まって人間はできている。だからこそ、いろんな人とつながり合うことができるのだ。佐藤から教えられ一回り成長したゆりは、パリへと旅立った佐藤への思いを心に秘めながら、再び夜の世界へと戻っていく。

魅力的な導入部分に高い評価が集まりました。文章力も確かで、とても文学的な作品でした。そのため、ストーリーに起伏が少ない印象があったのも事実です。また、中盤以降の展開にはかなり無理を感じました。ヒロインのキャラクターひとつ取っても、少し共感性に欠けます。作品を生む力は確かなので、プロット全体を見通した上で執筆すること心がけてみてください。次回作に期待します。