あと一歩【2】

天の川を越える/森本和音

事故で両親を亡くした瑞希は、叔父が大神神社の神主を務める天野川村に越してきた。瑞希は村の高校に通い始めた初日から、梁瀬という男子のことが気になり始める。瑞希は幼い頃から人の心を読む能力を持つが、梁瀬の心だけは覗けないからだ。やがて、梁瀬にも瑞希と同様の能力があると分かる。瑞希が高校生活に馴染んできた矢先、資産家夫婦の遺体が神社の杜でみつかった。その事件が解決しないまま、今度は同級生の真美が何者かに殺される。村人たちは、事件は神社の大神様の怒りだと思い込んでいる。騒ぎの中、瑞希は透視能力で同級生殺害事件の真相を知り、犯人に殺されかかる。危ないところを梁瀬に助けられるが、なぜ梁瀬はその場にいたのか。やがて瑞希は、梁瀬の謎の行動の理由とそれに関係する自分自身の重大な事実を知ることになる。

キャラクターに共感できる部分は多く見られるものの、破綻なく作りこまれているというレベルまでは達していませんでした。設定が少しシリアスなため、それを逆手に取るほどのドラマ性がないととたんに陳腐な印象になってしまう恐れもあります。そういう意味では、やや、設定負けしているという意見も出ました。筆力にはセンスを感じる部分があるため、読みやすさは評価できました。また、「エンターテインメント性」については意欲を感じられました。独特の雰囲気はそのまま伸ばせば大きな武器になるので、次回作に期待します。