二次通過【5】

『探偵物語?ハッピー・エンドのロミジュリがあってもいいじゃないか!』/一色十郎太

ロミオと呼ばれている台場紀夫は13歳のとき、6歳の少女、樹里と出会う。彼女は大金持ちで身勝手な父親に捨てられ、姿を消した母親を探していた。それに協力したロミオは警察に補導され、その理不尽さに腹を立てて荒れた生活を送るが、親身になってくれた佐藤弁護士のお陰で、10年後の現在は佐藤法律事務所でアルバイトしながら勉強する司法浪人になっている。 そんなある日、法律事務所が探偵事務所に調査を依頼した報告書が間違って送られて来て、ロミオが取り替えに出向くと、探偵が殺され、かたわらに女子高生がいた。それが十年前に出会った樹里だとわかるが、彼女は母親探しに協力してくれなければ間違えて送られた報告書を渡さないと言い、ロミオはまた協力することになる。樹里の父親の妨害と警察の追跡をかわして、何とか母親と対面させることができ、樹里もロミオが十年前のお兄ちゃんだと気づいて急速に心を寄せる。だが、樹里が持っていた書類は探偵殺害の犯人に関わるもので、その陰謀にハメられそうになり……。

ストーリー運びが秀逸で、最後まで楽しんで読める作品でした。多少の脚色過多はあるものの、キャラクターの魅力でそれをカバーしているといえます。ただ、肝心のキャラクター設定にブレを感じる箇所があるため、改稿の必要はあります。法律関連の記述は、裏づけが取れているものもあれば、確認が必要な部分もあるため、まだまだ荒削りではありますが、「エンターテインメント性」という点において高い評価が集まったため、通過となりました。