二次通過【4】

『奇跡33756』/田丸久深

10歳で突然死んだ幼なじみの真広は、高校生になった紗絵の前に、今も姿を表す。人々に幸福をもたらす「奇跡」として。世の中の奇跡の三分の二は、彼ら「奇跡」たちがこっそり手助けすることによって起こっているという。真広はなぜ「奇跡」になったのか。そして、彼が最後に起こす奇跡とは――?

小説作品において、書き出しのインパクトというのは最も重要な要素の一つと言えるでしょう。本作は、冒頭数ページで、主人公の幼なじみが亡くなるというショッキングな展開がありますが、その部分の驚きはかなりのものです。「ここからどうなるの?」という強烈なリーダビリティだけでも、読者をひきつける武器になるといえます。ただ、主人公が高校生であるという点において、大人の読者に抵抗感を与える危惧があります。「奇跡」という概念の作りこみはオリジナリティがあり素晴らしいのですが、逆にいえば、このアイデアでもう少し大人の主人公を動かすことも十分に可能です。また、ラストへ向けての展開も少しご都合主義的なのが残念でした。ストーリー全体を通しての改稿は必要ですが、冒頭のインパクトと、アイデアに高い評価が集まり、通過となりました。