二次通過【2】

『パールオパール』/寺地はるな

主人公の清海は物語の冒頭、血のつながっていない義兄の清人の失踪事件に巻き込まれる。生活力がなく、大人になれきれない清人は、幼なじみの妻のまひろが妊娠したことで父になることから逃避したのだ。洋菓子店店員に過ぎない清海は、狭い賃貸アパートの部屋に転がり込んできたまひろを居候させることになる。清海にとって、義母の時子はダメ人間の清人と同様、血はつながっていないが、数少ない心の支えのひとつだ。時子はふたり目の夫の連れ子だった自分に心強い愛情を注ぎ続けてくれていた。まひろの出産、別れきれない不倫の男とのいざこざ、新しい彼氏との出会いなどを経て、清海は自分が抱える罪の意識やわだかまりを少しずつ解いていく。

 人の女性をしっかりと描けている部分が高く評価されました。主人公を中心とした人間関係や、登場人物たちの心の変化も自然で、作者の筆力の高さを裏付けています。ストーリー自体は小さな世界観での出来事であるため、「エンターテインメント性」には少々欠けていますが、それを補うだけの文章力があると判断し、通過となりました。