あと一歩【2】

浦和物語’97 真っ赤な恋の大作戦/鷹尾へろん

あらすじ&選評

大学3年生の森沢つぐみは、6年前の「証(あかし)」について回想する。中学3年になったとき、担任で体育教師の白銀八郎は「受験勉強も大事だが、今年は君たちにとって中学最後の年だ。その記念になるような『証』を残して欲しい」と挨拶する。その白銀先生は浦和レッズの熱烈なサポーター。そのせいで恋の経験もなく、34歳になっても独身である。臨時採用として赴任して来た宮原美都子に一目惚れするが、宮沢賢治とクラシック音楽が好きだという彼女と何を話せばいいのかもわからない。それを見かねたつぐみは先生の恋を成就させることを「証」にしようと決め、友達2人と「白銀の恋の応援団」を結成して、次々と作戦を実行する。その1つとして、白銀先生と宮原先生をレッズ戦の観戦を仕組んだが、宮原先生は途中で気分が悪くなって帰ってしまう。この年、浦和レッズはアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)の初制覇を目指して、長く厳しい戦いに挑んでいた。白銀先生の恋も同様だった。そして、ACLの決勝の日、つぐみたちはスタジアム全体を巻き込む大掛かりな作戦を仕掛ける。そして、浦和レッズが悲願の優勝を遂げたとき、宮原先生の意外な秘密がわかり……。

 浦和レッズがACL初制覇を目指していた年に、熱狂的なレッズサポが初めての恋に挑むというテーマや、文学も音楽もわからないスポーツバカの先生に不可解なところがある美人教師が好きな宮沢賢治やクラシックを教え、デートを仕組むおませな中学生の女の子3人というキャラクター設定がとても良いと思います。最後の美人教師の秘密も微笑ましいです。だが、レッズの浮き沈みと恋の行方があまり連動していないところが残念。連動させれば小説ももっと盛り上がるだろうと感じました。つぐみが回想する形式も、あまり生きているとはいえません。タイトルも含めて惜しい作品です。次回作に期待します。