第10回ラブタメ大賞一次通過作品【13】

『奇跡33756』/田丸久深

あらすじ&選評

10歳で突然死んだ幼なじみの真広は、高校生になった紗絵の前に、今も姿を表す。人々に幸福をもたらす「奇跡」として。世の中の奇跡の三分の二は、彼ら「奇跡」たちがこっそり手助けすることによって起こっているという。真広はなぜ「奇跡」になったのか。そして、彼が最後に起こす奇跡とは?

真広たち「奇跡」は奇跡を起こすことしかできない、という皮肉な設定が切なくて、紗絵とのラブストーリーにアクセントを加えています。恋の障害としてファンタジー要素を組み込む手腕は見事で、作者の実力をうかがわせました。あと一歩筆を進めて、「奇跡」という存在を読者にもっと納得してもらえるような工夫が欲しかったです。日常におこる様々な出来事が、実は「奇跡」がもたらしているものだった、ということを物語の前半でいくつか示すことができれば、真広の存在感がより増し、読者の感情移入度も増したのではないでしょうか。その点の改稿に期待して、通過としました。