第10回ラブタメ大賞一次通過作品【6】

『女神様をさがして』/宇佐美游

あらすじ&選評

世間体第一の母の期待に縛られる土屋遼平32歳。フリーライター3年目で人気雑誌「ウルフ」の記事を任されるようになったもののイジメに遭い、二度と働かないことを決意した。「養って」と頼み、彼女にも振られる。そこで養ってくれる女性を紹介する『3号塾』に入会する。専業主夫をめざし、減量し、プチ整形し、美に投資する男たち。遼平の最初のお試し同棲派遣先は南青山の豪邸で、令嬢・麗実は超肥満体の醜女だった。地獄の子作りの果て、遼平はメイドに手を出して追い出されてしまう。次の派遣先は年収2千万円の櫻子43歳。美人だが横柄で遼平のことを下男扱い。あまりにも見下されて遼平は自ら家を出る。三番目は鎌倉の小学校教師・星出奈津37歳。地味で普通すぎて物足りなさを感じるが、深く安定した愛情を示す奈津に、遼平は真に愛することを学び、仲の悪い両親とは違う異性との付き合い方を初めて知るのだが……。

アラサー、アラフォーの婚活を鋭い視点で描いた恋愛小説。主人公は、仕事で打ちのめされて「もう働きたくない!」と食べさせてくれる伴侶と出会うべく婚活に励む32歳の男性ですが、男女問わず今どきの婚活、ブラックな職場環境に疑問を抱いたことのある人には身近に感じられるテーマで、遼平の憤りや戸惑いは他人事に思えないでしょう。婚活を通じて出会う男女それぞれにクセがあり、「こういう人、いるいる!」と笑っているうちに、「自分だったらどうする?」と考えさせられてしまうという絶妙な筆運び。一生食べさせてくれる理想的な配偶者を紹介し、女を落とすテクニックを(反則ワザも含めて)レクチャーする『3号塾』の代表・黒塚隼人のキャラがよかった。エピソード一つ一つにも説得力があり、毒を含んだ笑いも利いていて、ユーモアのセンスにも魅力を感じました。