第10回ラブタメ大賞一次通過作品【2】

『由比ヶ浜・ホテル・シーサイド』/藤野まり子

あらすじ&選評

鎌倉で内装職人として働く小沢和美のもとに、新人設計士の河村公平という男性が訪ねてくる。公平は由比ヶ浜の廃ホテル『ホテル・シーサイド』の改装を和美にお願いするが、そこは長いあいだ“呪いのホテル”として地元の人々から厭われてきた場所だった。しぶしぶ改装に着手した和美だったが、同じころ、自分を育ててくれた祖母の絹江が余命わずかと宣告され、妹の桃子が突然外国に嫁ぐと言い出す。家族がバラバラになることに不安を感じる和美。はたしてこれは『ホテル・シーサイド』の呪いなのだろうか――。

寡黙で仕事熱心な、男勝りの和美のキャラクターに惹かれました。妹の桃子は対照的に無邪気に描かれ、また、和美との恋を予感させる仕事相手の公平は生まれつき病弱で……という設定にも新しさを感じました。“呪いのホテル”の真相はやや切なく、また、少々不気味に感じたところもありますが、真相にたどり着くまでのハラドキ感などを評価し、通過としました。