- 『やきもちは棚にしまって』 平原 ことは
- あらすじ
- 青森在住の主婦・美穂と浦和在住の主婦・奈美。ふたりはかつて和也という同じ男性を愛していた。
- 美穂は和也と高校時代に付き合っていたが、美穂が大学に進学したあと自然消滅。そして10年後、美穂は焼肉店で働く和也に再会するが、すぐに和也は海の事故で死んでしまった。やがて結婚し、妊娠した美穂。かつて和也からもらった「焼肉の割引券」を旦那の本のなかにそっと隠す。
- 奈美は高校3年から26歳までの8年間、和也と付き合っていた。付き合いがマンネリになってきたころ、奈美は職場の先輩に告白される。彼と付き合うことを決め、和也に別れを告げようとしたとき、和也は海の事故で死んでしまった。その後奈美は先輩と結婚し、ふたりの子供に恵まれる。仙台転勤が決まり、引っ越し準備をしていると食器棚から「焼肉の割引券」が出てくる。
- 元カレの思い出を隠す女と見つけてしまう女。そんなふたりのラブストーリー。
- 評価・感想
- ひと言でいえば、平凡な主婦ふたりの“元カレ”からいまに至るまでの話。このふたりは元カレという共通項があるだけで、まったく絡み合うことがありません。
- 歯切れのよい作品ではないが、淡々とした文章にスルスルと入っていけました。人生って、もしくは人ってこんなものだよね……と思わずうなずいてしまうような女性的な感性、表現力が魅力の作品だと思います。実際、読み終わってすいぶん時間が経っても、言葉の表現などがいちばん印象に残っていました。ふたりのまったく違ったキャラクターもよく描けており、自然と共感が持てました。
- ただ、ふたりの主人公がリンクすることのないまま終わってしまったからなのか、単にメッセージ性の欠如からなのか、若干物足りなさが残りました。読後、気持ちをどこに落ち着けたらよいものか……。思い出のアイテムが、「焼肉の割引券」以外にもう少し仕掛けがあったらよかったのかもしれません。